養蜂について
このごろよく町民の方から養蜂のやり方を教えてほしいという相談を頂きます。
基本的に趣味で養蜂を始めたいという方にはいろんな人がいらっしゃるのですが、同じ思いを持ってやって頂けるかというところが一番大切なので、その人に合ったアドバイスと、ある程度の技術まではお伝えたせて頂いています。
私の場合は趣味養蜂ではなく専業養蜂として確立してゆく計画なので、あまりに趣味の養蜂家の方が増えてしまうと、30㎢しかない上島町では養蜂ができなくなってしまいます。そのうちいくらかはそもそも利用できない無人島であることを考えても、明らかに面積が足りません。
日本ミツバチは、巣箱を中心として約2㎞の範囲で行動します。面積では13㎢弱でしょうか。単純計算で一か所の飼育群数を4群が適正とすると、12群も飼えないような計算になりますから、1群5㎏の蜜が採れたとして60㎏が上限の採蜜量となります。つまり、1㎏⇒1万円の販売で60万円の売上が目一杯のラインだと考えることができます。
幸い、上島町には春先の蜜源がとても多いのでそれ以上に採ることも可能ですが、すべての群が越冬できるわけではないことを考えると限界値はすぐに見えてくるでしょう。
なお、たくさんの蜜が採りたいという方はミツバチに越冬させる努力をしませんから、彼らの最小限の食料まで採ってしまいます。そうすると、命を存続させたいミツバチは他の蜂群の貯蜜を盗む盗蜂が発生してしまいます。盗蜂は、他群の越冬を妨げるだけでなく、群同士の交流によって病害虫の感染を加速させますから、趣味養蜂家さんの最低限のモラルとして感じて頂きたいと思います。
また、西洋蜜蜂を前提とした転地養蜂ではあまり気にすることもないのですが、定置養蜂の場合では蜜源の植栽が最も大切な部分になります。春先の蜜源量でピークの採蜜ができる蜂群数を飼育した場合、花の咲かない夏や冬の時期に餓死してしまいますので、特に夏の蜜源を養蜂家は植えなくてはいけません。
蜜蜂が、天然の花蜜を取ってくるから蜜源は植えなくていい、ということではありません。地域に専業または趣味の養蜂家がいる以上は、すべての養蜂家が蜜源の植栽努力をする必要があるというのがマナーとして浸透しなくてはいけないと思います。
毎年春に分蜂群を捕獲し、秋に蜜をとる。それは良いのですが、
・越冬越夏を考慮して、食料を枯渇させないこと。
・蜜源を植栽すること。
以上の2点は、この小さな町での最低限のマナーであり、感覚としてのモラルであるということをお伝えしてゆければと思っています。