とほほ
こんにちは、上島町島おこし協力隊の西尾です。
かまどをつぶしました。
潰すか潰すまいか、うーんと悩みました。
古民家から瓦をはずし(縦葺きになりました)、かまどを潰してしまうと、何が残るのか(いや、何も残らない)。てなかんじの反語が浮かんできます。
ですが、屋根改修で取り外した煙突がぼろぼろ崩れるほど脆かったこともあり、かまど全体が疲れきったように思われたので、寿命を迎えたとして潰すことにしました。
潰し方は算数より簡単。下の四角い穴の中に爆弾を置き(火薬は気持ち多めに充填し)、導線をひいて火をつけると10秒でおしまいです。
なんていうのはゲームの世界で、現実にはわりと体力仕事です。私は、上からハンマーでごつごつと叩き割りました。かまどはよく耐えてるなあと感心するくらい脆くなっていて、フレーク状で、きび砂糖のようで美味しそうです。
これから古民家の回収をして、かまどが欲しいと思う方は、一から作り直す見積りで考えておいたほうが良いと思います。かまどのある家を、古民家ではないと言えるだろうか(いや、言えない)。と、言いたくなるほどの趣があります。
ちなみの今回の誤算は、かまどが土間の上に乗っているだけではなかったことです。床に土間を敷くと同時に設置されていて、床と一体になっていました。なので、斫った後に土間を敷きなおさないといけないのですねー。作業は増える一方です。大した苦労もないですが。
ちなみにこれ、張り巡らされた導線と爆弾のスイッチです。スイッチを上げると導線に火が付き、なーんて。もういいですね。昔ながらの室内灯のスイッチです。古民家っぽさが漂っています。
梁をたわしでみがきます。煤がどんどん落ちて、少しずつきれいになります。
鼻や顔が黒くなって、メガネや服が黒くなって、古民家改修をはじめて最も改修工事をしているなあと実感します。せっかくの古民家改修だから、みんなどんどん汚れたいですよね。汚れてゆく、汚れてゆく、なのに、心は洗われてゆく~。
俺は一体、何なんだと。いつからこんなに心が綺麗だったんだと驚いてしまいます。
でもきっとたぶんそれは、煤で体が汚れてゆくにつれて相対的に心が美しく感じられるというだけの話なのです。
日を跨いで1時半。そろそろ帰ろう。
ふと耳を澄ますと、空から「おととこそ、おととこそ」。
ほととぎすの鳴き声がします。
空を見上げると浮かんでくるその気持ち、詠んでみました。
「ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有明の 月ぞ残れる」
なんだ、自分には、詩の才能があるんじゃないかと感心しました。
「百人一首」を詠みながら、慰めの気持ちで包まれた帰路は、わびしさでいっぱい、とほほぎすな時間です。
行きはよいよい帰りもよい。
おあとがよろしいようで。