島おこし協力隊(移住・定住促進ミッション) 卒業報告 平田浩司

 私は、令和2年4月から令和5年3月までの3年間、上島町島おこし協力隊として勤務いたしました。ミッション型としての勤務であり、そのミッションは、「移住・定住促進」です。日常の業務としては、①移住相談への対応と②空き家バンクの運営があり、③東京、大阪で開催される移住フェアへの参加も計画としてはありましたが、任期がちょうどコロナ禍の時期であったため、その多くが中止、またはオンラインでの開催となりました。移住促進分野に特化したポータルサイトの開設が、最初のタスクとなっていましたが、業者との連携がうまく進まず、その運用開始は令和3年度から同じミッションで勤務を開始した同僚の中山なぎさんがチームに加わってからとなりました。


 協力隊への応募の時点で、任期中の3年間に、任期終了後の生業として予定していたゲストハウスを開設することを目標に定めていました。また、協力隊任期中のミッションに関する活動を、任期終了後にも継続して実施できるよう、その活動の基盤となる組織をつくっておくことも目標としました。そのため、3年間の任期を、1年目には協力隊の活動に専念し、町内での生活と活動の基盤をつくる、2年目に創業に向けて動き出し、組織としての活動も開始する、3年目には創業準備を優先し、組織としての活動も軌道に乗せる、ということを、大まかなスケジュールとして構想し、実際、ほぼその通りに動くことができました。


 1年目、私が町内の空き家に関する現状を把握し、また町内の方々にも空き家問題や協力隊活動に関心を持っていただくことを目標として、町内にある戸建て建物全戸を対象とした空き家の実態調査を開始しました。調査は、町内6つの地区・区ごとに区切って実施し、それぞれで報告書を用意しました。この調査では、町内会との協働を心掛けました。1年目の夏から2年目の夏までのちょうど1年間をかけて町内全戸の空き家を調査し、報告まで完了させることができました。


 また1年目には、町外の、特に隣接する今治市の島嶼部で活動する協力隊との交流と相互研修を目的として「せとうちライン」という交流会を設立し、定期的に相互に訪問を重ね、視野を広めてきました。他の自治体の協力隊制度の現状を知ることができ、また、より多くの協力隊員との縁をつなげる機会となりました。


 さらに1年目より、佐島にある農産物の無人販売所「佐島しまのひろば」に関わることができ、佐島の地域社会との接点を持つことができたと同時に、地域の「小さな拠点」について関心を拡げることができました。


 協力隊としての活動ではありませんが、1年目に狩猟免許を取得し、2年目から上島町の制度である害獣駆除の弓削イノシシ捕獲隊に加えていただくことができました。罠猟の難易度は高いと感じているのですが、時間のできる任期終了後に、より一層の研究を重ねていきます。


 1年目の夏頃から2年目の秋頃にかけ、上島町において空き家の利活用に関心を持つ、主に下弓削区の移住者の方たちと協議を重ね、特定非営利活動法人かみじま町空き家よくし隊を設立することになりました。このNPO法人は、令和3年10月に法人登記を行いました。活動の主な目的を、「町内にある空き家を整備し、移住希望者に貸し出すことによって利活用すること」としています。


 1年目の8月、愛媛県で活動する協力隊員を支援することを活動目的の一つとする一般社団法人えひめ暮らしネットワークによる協力隊向けの研修会「えひめ暮らし生業づくり研修会」が、今治市の大島と大三島を会場としてあり、これへの参加が創業について学んだ最初の機会となりました。また、1年目の年度末に近い令和3年2月、伊予銀行が今治市内で実施した「いよぎん未来起業塾 創業セミナー」に今治市の協力隊員とともに出席し、創業までの流れについて体系的に学ぶことができました。


 2年目におけるもっとも大きなイベントは、愛媛県が実施する創業支援プログラム「EGF(愛媛グローカル・フロンティア)プログラム」とビジネスプランコンテスト「EGFアワード」への参加です。ビジネスプランの応募が夏にあり、最終的な結果発表は年度末の2月、途中にビジネスプランのブラッシュアップ研修会が何度かあるという、ほぼ1年がかりのビジコンです。結果として、「EGFアワード2021-2022」において優秀賞を受賞させていただきました。また、翌年度には「EGFアイデアソン」、「EGFアクセラレーションプログラム」という2つの創業支援プログラムに参加させていただきました。このような創業支援につながったことにより、任期の終了までにゲストハウスを整備してオープンし、また令和4年5月に合同会社を設立することができました。


 2年目よりNPO法人への助成金申請を始め、3年目の令和4年度に、結果的に4つの助成金を受けて、NPO法人の活動を本格化させました。まず、公益財団福武財団の瀬戸内海地域振興助成を受けて生名島の空き家を整備して、上島町への移住・定住希望者への貸し出しにまで漕ぎつけることができました。今後も空き家を、主にDIYにより整備して移住希望者に貸し出すという活動を、年に1軒のペースででも、継続していきたいと思っています。次に、一般財団法人ハウジングアンドコミュニティ財団の住まいとコミュニティづくり活動助成を受けて、高井神島の空き家を整備しました。さらに、この空き家をどのように活用するのか、そして人口減少が急速にすすみ「限界離島」とも言える状況にある高井神島の未来をどのように想定できるのか、専門家による助言をえるため、愛媛県からのNPO法人活動助成事業を受けて、島根大学教育学部の作野広和教授と愛媛大学社会共創学部の渡邉敬逸准教授のご参画を得て、数度の現地調査を実施して、令和5年1月には「みんなで考える10年後の高井神」と題したワークショップを開催しました。令和4年10月には愛媛新聞社からの助成を受けてNPO法人福井ふるさとサポートネットワークの北山大志郎理事長をお招きし、弓削島で講演会「空き家問題 早期決断のススメ」を開催しました。さらに令和5年1月には、上弓削区にある空き家の管理者からのご依頼を受けて、庭木の剪定作業を受託しました。空き家利活用のための活動に向けた活動は、任期終了後にも主に設立したNPO法人を通して関わっていきます。また、ご縁をいただいた高井神島の地域社会維持に向けた活動も継続していきます。


 3年目の前半には、創業支援プログラムへの参加に加えて、創業に向けた補助金の申請と、ゲストハウスの簡易宿所としての営業許可の取得に注力しました。補助金は結果として、令和5年度の愛媛県と公益財団法人えひめ産業振興財団による愛媛グローカルビジネス創出支援事業費補助金、愛媛県商工会連合会による新ビジネスモデル展開促進補助金、上島町による島おこし協力隊員定住環境整備補助金を受けさせていただきました。資金面では、令和2年度の創業セミナーからのご縁で、伊予銀行にご融資いただきました。


 3年目後半に、銀行融資の実行を受けて、ゲストハウスの予定物件の改修に着手し、エアコンやベッドなどの設備を購入・設置しました。保健所からの営業許可は、消防設備の設置完了と検査を待って、令和5年1月に下りました。任期最終版の2月から3月にかけて広告宣伝を兼ねて、「マクアケ」においてクラウドファンディングを実施しました。


 ここまで3年間の島おこし協力隊としての活動を振り返ってきました。文字数にしてざっと3,000字です。いま振り返って、協力隊として3年間を過ごすと決めた時点において任期中にやりたかったことは、やりきることができた、と思っています。


 ここまで述べたことと比べると優先順位は低いのですが、移住したらやりたかったこととして、農業/農作業があります。自宅のご近所の方のご厚意により、農地だった耕作放棄地を貸していただけることになりました。ゲストハウスの裏の山も、元は農地として使用されていたそうで、ここも長年放置されています。また趣味として、せっかくの恵まれた環境で生活していますので、サイクリングと釣りにも挑戦したいと思っています。


 事実関係を簡単にまとめただけとはなりましたが、以上で上島町の島おこし協力隊と卒業するにあたっての活動報告とさせていただきます。

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